第3回 思いがけないサービス

 哲夫はカウンターに座ると、味噌ラーメンを一杯注文した。
ここは札幌味噌ラーメンの有名な老舗だ。一杯750円と値段も手頃だからか、いつも大勢の客であふれている。でもこの日はもう昼時をとっくに過ぎていたから、ほかの客は二、三人しかいなかった。
 思えば今日はロクなことがなかった。早朝、職場に呼び出されたと思えば、やることなすことすべてが裏目にでてしまい、こんな時間までかかってしまった。もう大分暗くなってきたし、ラーメンでも食べて早く帰ろう。哲夫は深いため息をついた。

 「はい、お待ち!」
 白髪の主人の威勢のいい声とともにカウンターに置かれたのは、アツアツの味噌ラーメンと平皿に盛られたライス(税込100円相当)だった。
 「えっ!?」
 ライスは頼んでませんけど…。哲夫は心の中で訴えた。すると、驚いたその目を見て、主人が穏やかな表情で言ったのだった。
 「たくさん食べて元気だしな」
 お腹がすいていた哲夫は、主人からの思いがけないサービスに心から感謝した。そしてこの店が何十年も人に愛されている理由がわかった気がした。やっと今日いい事があったと、主人の優しさを思いながらラーメンとライスを味わった。

 「ごちそうさまでした…」
 席を立ち代金を支払おうとした時、主人が言った。
 「850円になりやす」

(了)

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北野とほ (Kitano Toho)
自作小説&エッセイを勝手に不定期連載してます。
雪国在住です。野山を歩くのが好きです。

  

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